第3回 母語・継承語・バイリンガル教育研究会

母語・継承語・バイリンガル教育研究会の第3回「母語喪失を語るための基礎知識」が2004年2月14日名古屋外国語大学で行われました。この研究会は、「母語の喪失」をテーマに数々の貴重な業績を挙げていらっしゃる湯川笑子先生に、2時間半にわたる講義をお願いし、皆で学び合う会(ワークショップ)にしました。出席者は全部で42名(会員15名、非会員27名)、そのうち約半数以上が大学院生でした。
お話は、「母語喪失を語るための基礎知識」という題名のもと、次の項目についてご自分のお子さんを被験児とされたご研究をケーススタディとしてお話しくださいました。
 1「言語喪失研究の意義」
 2「言語喪失とは何か」
 3「言語の何を見て喪失を語るのか」
 4「何ではかるのか」
 5「ツールの妥当性、信頼性」
 6「理論的枠組み」
 7「これまで分かっていること」
 8「何の目的で喪失を研究するのか」
 9「避けたいこと」
最後に提案として次の2点を挙げられました。大変大事な点を指摘してくださったと思います。
 1バイリンガルとして子どもたちが生きていくためにどうしても必要な母語能力を定義するための研究
 2どの程度のケア(時間、教授内容という変数)で必要な母語能力  が維持、伸長できるのかというlearningと組み合わせた喪失研究を
終始非常にわかりやすい講義で、その中にキーになる文献の紹介や研究上のヒントがいろいろ含まれており、大学院生、研究者には、たとえ専門分野が違ってもいろいろな意味で学ぶことが多い講義だったと思います。
さらに手に入りにくい文献をいろいろお持ちくださり、会の共有財産として次のものを残していってくださいました。どうぞご利用ください。(ご希望の方は、事務局の方へ)
Hansen, Lynne (2001) 4. Language Attrition: The Fate of the Start,  Annual review of Applied Linguistics (2001) 21:60-73. Cambridge  University Press 0267-1905/01 (2部)
Yukawa, Emiko (1997). Language Attrition from the Psycholinguistic Perspective: A Literature Review. Centre for Research on  Bilingualism, Stockholm University.(7部/一部1000円で購入可能)
Yukawa, Emiko (2001). Reviews. Lynne Hansen (ed.): Second Lanugage Attrition in Japanese Contexts. Oxford University Press, 1999. Sandra G. Kouritizin: FACE[T]s of First Language Loss, Laurence Erlbaum  1999.(2部)
Yukawa, Emiko (2001).(第2章)「幼少時に学んだ外国語の行方ー「貯蓄パラ ダイム」を用いた言語喪失研究」京都ノートルダム女子大学英語英文学科(編)『応用英語研究論集』昭和堂(2部)
母語後退、喪失の問題は、今回のような心理学的アプローチに加えて、言語グループのダイナミックスとの関係で社会言語学的に捉えることも必要です。今後この課題をさらに深めていければと思います。
議事録はこちらにあります。