2019年度MHB研究大会のご案内(プログラム詳細)/2019 MHB ANNUAL CONFERENCE

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母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会
2019年度研究大会のご案内

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母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会は、国内外の複数言語環境にある幼児・児童・生徒・およびその他の学習者が読み書きも含むマルチリンガル能力を身につけられる言語教育の方法、理論、研究方法を探ることを目的として活動しています。

2019年度の研究大会は「すべての言語資源を活用した教育をめざして―各種言語教育の挑戦―をテーマに掲げ、基調講演とワークショップ及び会員による研究発表などを予定しています。

大会参加の申し込み方法は下記をご参照ください。みなさまの積極的なご参加をお待ちしています。

MHB学会 2019年度大会実行委員
mhb.taikai.2019@gmail.com

【大会概要】  プログラムのダウンロードはこちら

日時:2019年8月7日(水曜日)、8月8日(木曜日)

会場:立命館大学 衣笠キャンパス(京都市北区等持院北町56-1) 敬学館1階・地階

*アクセスマップ  http://www.ritsumei.ac.jp/accessmap/kinugasa/

*キャンパスマップ http://www.ritsumei.ac.jp/campusmap/kinugasa/

*受付や会場を示したキャンパスマップはこちら

賛:立命館大学大学院言語教育情報研究科、立命館大学文学部

テーマ: すべての言語資源を活用した教育をめざして―各種言語教育の挑戦―

本年度のMHB学会研究大会は、上記の通り、「すべての言語資源を活用した教育をめざして―各種言語教育の挑戦―」といたしました。外国語教育の対象者である日本在住の児童生徒の言語状況と学習状況は複雑化、多様化しており、英語を使用して専門科目を学ぶ動き(CLIL, EMI, CBIなど)も出ています。同様に英語以外の外国語教育においても、学習者人口がその当該言語を継承語として知っている場合も多々あり、それに対応すべく教授法やカリキュラムの変化が求められています。外国人学校やインターナショナル・スクールで学ぶ児童生徒の背景も多様化しており、この分野も、MHBが柱としている「各種言語教育」に分野の垣根を越えて関わってきています。

このような状況を考慮し、本研究大会では、国際共通語としての役割を果たす英語および英語科目開講(English-Medium Instruction、EMI)について多くの業績をあげていらっしゃる早稲田大学大学院の村田久美子教授に基調講演をお願いしました。このような現象が持つ意味、世界的な動向を含め、この分野の知見を教えていただきます。また、2日目には、各種言語教育を進めるための教授法やカリキュラムに特化したワークショップを行います。このワークショップでは、国際共修(COIL)の実践方法、ニューカマー児童生徒の母語の支援方法、EMI(外国語で専門科目を教えること全般を含む)を成功させるための大学の専門科目担当教授者の教授法ストラテジーをとりあげます。 この他にMHB学会が対象とする多岐にわたるテーマでの自由研究発表とポスター発表は例年通り2日間に分かれて行います。さらに、1日目の夕方には、SIG活動および懇親会を設定しました。最後までふるってご参加ください。大いに語りあいましょう。

【プ ロ グ ラ ム】

87日(水)

12:15   受付開始

13:00   開会

13:05  基調講演 「バイリンガル/多言語環境の中での(共通語としての)英語(ELF)を媒介とした教育(MI/E)」

村田久美子 氏 (早稲田大学教育学部総合科学学術院 ・ 教授)

本講演ではグローバル化進行の中、日本でも特に過去10年ほど奨励され、実施されることが多くなった英語を媒介とする授業・教育(English-medium Instruction/ Education – EMI/E)に焦点を当て、EMIと共によく語られるCLIL(Content and Language Integrated Learning)との関係にも触れつつ、EMIに関する多くの論点を取り上げる。特に、一見相対立するEMIとバイリンガル/多言語主義の関係を明らかにしつつ、EMI実施上切り離せない「共通語としての英語」(English as a Lingua Franca – ELF)の概念を導入、グローバル化進行の中で広く導入されているEMIは、その性質上多言語環境の中で実施され、EMIのE、つまり「英語」は、ELFであると確認すると同時に、ELF使用の現実と政策、教育現場レベルではしばしば乖離がある点を指摘する。この乖離を講演者やその同僚による研究、言語政策やメデイアに現れる文書から得られたデータで説明しつつ、多言語背景の英語使用者がいかに多様な言語資源を用い、効果的にコミュニケーションを図るかを紹介、EMIの効果的な実施が、母語、継承語、バイリンガル(多言語)教育の理解及び最近よく取り上げられるトランスランゲジグング(translanguaging)の現象とも相容れることを確認する。

著書・編著書
– Murata, K.(ed.)(2019) English-Medium Instruction from an English as a Lingua Franca Perspective: Exploring the higher education context. London: Rout ledge.
– Murata, K.(ed.)(2016) Exploring ELF in Japanese Academic and Business Contexts: Conceptualization, research and pedagogic implications. London: Rout ledge.
– 村田久美子・原田哲男編著 (2008)『コミュニケーション能力育成再考―その理論と実践』ひつじ書房 他多数

14:30  休憩

14:50  口頭発表1,2,3 *3会場同時進行

<口頭発表1>  【1階108】

14:50〜15:20

「日本における内容重視型ロシア語教育の実践―学習者の主体性と言語学習における対話性―」

横井 幸子(大阪大学)

15:30〜16:00

「「教育訳」を日中バイリンガル教育に応用した実践例」

吉田 慶子(大東文化大学)

16:10〜16:40

「継承韓国語教育に対する親の意識―ハングル学校に通っている子どもの親を中心に―」

李 銀淑(大阪女学院大学)

<口頭発表2>  【地階009】

14:50〜15:20

「双方向イマージョンプログラムにおける日本語学習者と継承語話者の言語口頭運用能力」

高倉(林)あさ子(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)・原田 哲男(早稲田大学)

15:30〜16:00

「母語による教科学習支援に参加した日本人中学生の意識」

宇津木 奈美子(帝京大学)

16:10〜16:40

「漢字圏在住の年少日本語継承話者にとっての漢字の役割―北京・台北・香港での調査より―」

柳瀬 千惠美(九州大学)

<口頭発表3>  【1階106】

14:50〜15:20

「EMIプログラム(英語による専門教育)と日本語教育の関係性―複言語教育の視点から―」

村田 晶子(法政大学)

15:30〜16:00

「異言語承認のためのALTとのティーム・ティーチング授業―小学校外国語教育への提案―」

ピアース・ダニエル ロイ(京都ノートルダム女子大学)

16:10〜16:40

「トランスランゲージングと複言語教育―言語能力観から検討する―」

大山 万容(立命館大学)

17:00  部会(SIG)活動

  1. 海外継承日本語部会【1階101】
  2. インターナショナル・スクール部会【1階102】
  3. アセスメント部会【1階103】
  4. バイリンガル作文部会【1階104】
  5. 各種言語教育部会【1階105】

19:00  懇親会【以学館地階 以学館食堂 E-Platz】

8月8日(木)

9:30  受付開始 【敬学館1階】

10:00  ワークショップ 1,2,3,4 *4会場同時進行

1回目:10:00〜10:50

2回目:11:00〜11:50   *1回目と2回目の内容は同じです。

<ワークショップ1>  【1階108】

「COIL(オンライン国際協働学習)教育実践入門」

池田 佳子(関西大学)

<ワークショップ2>  【地階009】

「文化言語の多様な子どもの日本語能力評価- DLAのJSL評価参照枠を通して-」

真嶋 潤子(大阪大学)、櫻井 千穂(広島大学)

<ワークショップ3>  【1階107】

「スマホ版スカイプを利用した遠隔型の学習支援-母語支援者と子どもの相互作用に注目して-」

王 植(NPO法人子どもLAMP)、清田 淳子(立命館大学)

<ワークショップ4>  【1階106】

「外国語で授業を実施するための50の教授ストラテジー」

湯川 笑子(立命館大学)

12:00 昼食休憩

13:00 総会 【1階108】

13:30 ポスター発表1,2,3 デモンストレーション *3会場同時進行

<ポスター発表1>  【1階103】

「教科書に対する読みやすさの評価: ―jReadabilityとBCCWJを用いて―」

李在鎬(早稲田大学)

「ろう児のアイデンティティ・テキスト」

田中瑞穂(北海道札幌聾学校、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 博士後期課程)

「東京育ちの韓国人バイリンガルの母語使用と言語態度―家庭での母語教育の効果について―」

金信栄(早稲田大学大学院 修士課程)

「ひまわり教室(外国ルーツの親子の学習支援教室)の現状と課題」

児嶋 きよみ(Office Com Junto)

<ポスター発表2>  【1階104】

「小学校で培った聞く力を生かした中学校英語教育」

小柴 和香(四天王寺大学)、オム・ガンス(京都朝鮮中高)

「日本における初任外国語教員1年目の経験と成長の一考察―新任教員2名の追跡調査―」松本 哲彦(立命館大学大学院 修士課程)

「日本語イマージョン教育プログラムにおける保護者のサポートに関する一考察―ポートランド公立学校の例を基に―」

勝 成仁(横浜国立大学大学院 修士課程)

<ポスター発表3>  【1階105】

「アイヌ語鵡川方言の現状と伝承」

岸本 宜久(札幌学院大学)

「移民の子供の民族アイデンティティと言語認識―中学生でアイルランドに移住した子供の体験から―」

竹内 陽介(立命館大学)

 「就学前の外国籍児童・親子へのプレスクール教室の実践による家庭の文化資本の発掘」

内田千春(東洋大学)・齋藤ひろみ(東京学芸大学)

「華僑家庭における言語生態の変化および中国語継承―ある在日華僑家庭を例に―」

張 珵珵(慶應義塾大学大学院 博士後期課程)

<デモンストレーション>  【1階106】

「日墨大学生による紙芝居プロジェクト―多言語教材の作成と活用―」

鈴木 小百合(神田外語大学/Universidad de Guadalajara)

14:40 口頭発表 1,2,3 *3会場同時進行

<口頭発表1>  【1階108】

14:40〜15:10

「ティーチャー・トーク方略を高めるための同僚間の教員研修を通した英語指導の変化」

三ツ木 由佳(立命館小学校)

15:20~15:50

「ニューヨーク州ブルックリン区における日本語双方向バイリンガルプログラム(Japanese Dual Language Program、公立小学校P.S.147)の実態」

堀野 善康(京都外国語大学大学院 博士前期課程)

<口頭発表2>  【地階009】

14:40〜15:10

「補習授業校に関する課題の分析―教育と運営に関するアンケート調査からの一考察―」

金子 浩一 (宮城大学)

15:20〜15:50

「私立小学校プログラミング授業:英語・日本語トランスランゲージングで進める学び」

松尾 由紀(立命館中学高等学校)

<口頭発表3>  【1階107】

14:40〜15:10

「日本人大学生中国語継承語学習者の困難―教師と学習者の立場から―」

李 光曦(大阪大学大学院 博士後期課程)

16:00 閉会 (口頭発表の本数によっては閉会時間を変更する場合があります)

【参 加 費 ・ 振 込 先】

(1)大会参加費

<事前申し込みの場合(2019/4/1〜7/10)>

一般会員、学生会員:2,000円/準会員、非会員:4,000円

<当日参加の場合>

一般会員、学生会員:3,000円/準会員、非会員:4,000円

※事前申し込みは、期限日(7月10日)の17:00(東京時間:UTC+9)までに大会参加費の納入完了が大会実行委員会で確認できることが必須です。

※MHB学会は、学会の趣旨に賛同される方を会員として随時受け入れています。入会希望の方は「入会案内」https://mhb.jp/admission からお申し込みください。

(2)懇親会費

・懇親会費は準備の都合上、事前申し込みのみ受け付けます。会員の種別を問わず一律3,800円です。

(3)振込先

・大会参加の申し込みと同時、もしくは前後1週間以内に、参加費および懇親会に参加される方は懇親会費を、以下の口座まで振り込んでください。学会年会費の振込口座とは異なりますので、ご注意ください。

1.ゆうちょ銀行からの送金の場合

・ 記号番号 14470—50158621

・ 加入者名(口座名義) 湯川 笑子 (ユカワ エミコ)

2.他の金融機関からの振込の場合

・ 銀行名: ゆうちょ銀行(金融機関コード9900、店番号448)

・ 預金種目: 普通預金

・ 店名: 四四八 店 (読み方: ヨンヨンハチ 店)

・ 口座番号: 5015862

・ 口座名義: 湯川 笑子 (ユカワ エミコ)

(※口座名義は個人名ですが、2019年度MHB大会実行委員会としての特設口座です)

※1回の振り込みにつき「一人分」のみを振り込んでください。

※大会参加費と懇親会費は一人分を一括して振り込んでいただいても結構です。

※いったん振り込まれた参加費および懇親会費は理由のいかんを問わず返金いたしません。

※送金手数料は申込人のご負担でお願いします。振り込み方によって手数料が異なりますので、ご注意ください。

【参 加 申 し 込 み】

・大会ならびに部会会合への参加については、資料準備の都合上、なるべく事前申し込みをお願いしておりますが、当日参加も可能です。

・事前申し込みをするためには、下の「参加申込フォーム」にアクセスの上、申し込んでください。http://urx2.nu/aWP0

※海外在住で代理人による振込が困難な方は、海外からの送金は高額の手数料がかかることから、このフォームで事前参加を申し込み、大会参加費は当日現金で(一般会員・学生会員:2,000円、準会員・非会員:4,000円)お支払いください。ただし、懇親会も参加される場合には、食べ物等の準備費用の都合上、当日支払いは不可能です。日本在住の方に代理での振込を依頼してください。

《会場について》

  1. ご来場:構内に駐車場はありませんので、お車でのご来場はお控えいただき、電車・バスをご利用くださいますようお願いいたします。
  2. WiFi:会場内にはフリーのWiFiはありません。
  3. 大学食堂:両日とも、存心館という建物の地階にある食堂が11:00〜14:00に営業しています。
  4. 自動販売機:会場となる敬学館1階の出入口の外に、飲み物の自動販売機があります。
  5. 休憩所:大会両日とも、敬学館1階(112、113教室)に参加者休憩所をご用意しましたので、昼食時や休憩にご利用ください。
  6. お子様連れでご参加の方へ:保育のためにご家族などを同伴される場合、保育者の方は参加費無しでお入りいただけます。当日受付にて、その旨お申し出ください。上記休憩所をご利用いただけます。

《書籍出張展示販売のご案内》

8月7日(水) 12:30〜16:30  【敬学館1階 114】

8月8日(木)  9:30〜15:30  【敬学館1階 114】

出張展示販売業者:凡人社、くろしお出版

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<参考> MHB学会 各部会の活動目的

a. 海外継承日本語部会

海外で日本語を継承語として教える教師を中心に、継承語・バイリンガル教育に関心のある研究者の集まりとして発足。補習校や週末学校の先生をはじめ、現場で運営にたずさわる人々、継承語学習者の調査に関心のある研究者などが参加している。メンバーの情報交換と専門家としての能力開発(プロフェッショナル・ディベロップメント)を目的とする。
https://sites.google.com/site/keishougo/

b.インターナショナル・スクール部会

国内外の海外・帰国子女、国際学校子女、その他各種イマ―ジョン教育に関わる教育実践者や研究者は、各国や各地域内ですらネットワークが希薄である。そこで、MHB学会という名の下に、各学校、各地域、各国の多様性をこえて、国内インターナショナル校と国外インターナショナル校および関心がある人々を結ぶネットワークを進め、実践活動の質の向上と、研究活動の活性化を目指す。
https://sites.google.com/site/mhbinternationalschool/

c.アセスメント部会

文化言語の多様な子どもの言語能力評価(アセスメント)に近年、日本国内でも関心が高まっている。当部会では、文化言語の多様な子どもの「ことばの力」の評価において、どのような側面をどう捉えるべきか理論を学び、新しい評価法の開発や既存の評価法の検証を行う。また、評価法が適切に実践されているか、結果がどのように活用されているかについても実践を共有し、よりよい言語教育のためのアセスメントの応用を考える。

d.バイリンガル作文部会

文化・言語の多様なこどもの言語能力の中でも特に作文力の育成はアカデミックな場面における評価の問題に直結することからもきわめて重要な課題である。本部会ではバイリンガルの子どもたちの作文力を二言語とのみ発達支えていく教育実践を指させることを目的とした作文力発達の研究を行うとともに、そうした研究に裏打ちされた教育実践のあり方を模索していくことを目的とする。

e.各種言語教育部会

MHBの第5の柱である各種言語教育分野は、日本在住で、日本語を主たる言語として使う言語多数派の児童生徒・大学生の外国語教育に焦点をあてた分野である。この部会は、家庭環境や移住による居住環境の影響(のみ)ではなく、学校の言語教育を通して多言語使用者を育てる方法を模索し、よい教授法を共有し、この分野の研究を推進していく場とする。目標とする言語が何語であるかを問わずに共同して活動し、ネットワークを構築する。昨今、言語学習者の背景状況は複雑化・多様化しており、MHBが5つの分野として分けている区分をいわば乗り越える形で、継承語話者やインターナショナルスクールでの学習者との関連もこの部会の範疇に入ってくることが予想されるが、昨今の多様性に柔軟に対応していく。

(以上、2019年MHB大会(プログラム詳細)案内 2019年7月5日掲載)